断 乳 (その3)

 

 

  

 断乳か、続乳か。私の心は決まらない。

 

 こうしている間にも、顎の骨は腐り続けているかもしれない。無視できるとはいえ、不気味である。 

 そういえば、こないだの夫婦喧嘩は、夫がビールを箱で買ったことが原因だった。妊娠から3年。慣れたとはいえ禁酒を続けている身にとって、夫の飲酒は、しかも遠慮のかけらもない箱でのビール購入は許しがたいものなのだ。断乳すれば、もうこの手の火種は消滅だと、夫は嬉しそう。

 授乳中は薬が制限されるから、風邪をひいたときは悲惨だった。ハワイでインフルエンザにかかったときなど、2時間待って診察を受けたのに、処置なしアンド投薬なし。金髪のドクターは気の毒がってくれたけど、" I'm sorry. " じゃ直らんのよ。

 なにより最近の娘の受乳?態度はけしからん。おっぱい飲みながらテレビも見たいらしく(このへん夫の血)、あっち向いたり、こっち向いたりで落ち着かない。おかげで私は足で蹴飛ばされたり、腹を踏まれたりして、痛いったらありゃしないのだ!

 

 とはいえ、しゃべるようになってからは、ときどきおっぱいから口を離し、私の方を向いて、

「おっぱい、おいしいよ」

とか、

「おっぱい、すきー!」

とか言うようになっていて、その瞬間の、とろけそうな幸福感はたとえようもない。いつかは・・・とは思いつつも、今すぐ手放すのは少し切ない。

 それに、いくら食べても決して太らない(決して痩せもしないが)のは、非常に魅力的。大好きな小豆アイスを6個一気しようが、真夜中にクリスマスケーキを半ホール食べようが、全然平気。奮発したホテルのディナーバイキングだって、元が取れぬと後悔することもない。好きなものを好きなだけ、思う存分食べることが出来る。夢のような暴食生活。

 徳川家康は6歳まで飲んでいたという話(真偽不明)も、なんとなく続乳を促す。やっぱり精神安定剤になるのかな、と思うと、なかなか先へ進めない。

 

 などと悩んでいるうちに、時間だけは正確に経過し、とうとう予約していた歯医者の日がやってきたのだった。

 

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