ヒョウが降った日
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ツバメがヒューリヒューリと飛び回り、玄関やガレージに巣を作り始めるのは、ここらあたりでは5月になってからのことだ。 実家の玄関には、数年前からツバメがやってきて巣作りをトライしていたのだが、毎年、ヘビ嫌いの母(ツバメの卵を狙ってヘビが家にくるらしい)に阻止されていた。ところが、今年は娘がツバメを見て喜ぶので、ヘビ怖さよりも孫かわいさが勝ったらしく、ツバメは遂に巣を完成させることができたのだった。 そして、しばらくして、巣の下で卵の殻を見つけたから、きっとヒナが孵ったんだよと報告を受け、あの愛らしいツバメのヒナを間近に見ることができると、楽しみにしていた。 そんな矢先の5月24日、すごいヒョウが降った。なんでも、ミカンくらいの大きさのヒョウだったっていうんだから、すごい。たまたま閉めてあった雨戸はヒョウに打たれてボコボコ。雨樋にいたっては、見るも無惨な穴だらけ。ガレージの屋根が割れていたり、車がデコボコになっていたりと、その惨状は語り尽くせないくらい。 ああ、この修理にいくらかかるのかしら、と心配する以上に、もっとショッキングな出来事が起きた。そう、親ツバメの1羽がヒョウにあたって命を落としてしまったのだ。 生まれたばかりのヒナたちに、たくさんエサを食べさせてやろうと、その日も朝から忙しく飛び回っていたはずだ。そして、突然のヒョウに降られ、きっと、弾丸のように降り注ぐ氷の固まりのなかを、必死で帰ってきたにちがいない。もう少しだったのに。あと2メートルでヒナの待つ巣にたどり着いたのに。 2羽でもフル回転の忙しさなのに、これから1羽だけで、どうやって食べ盛りのヒナたちを育てていくんだろうね、きっと大変だろうね、と話していた次の日の夕方、なんと、残された親ツバメは早くも新しい伴侶を連れて巣に戻ってきた。 すばやい親ツバメの行動だけでも、十分驚嘆に値するのに、自然はいつも人間の英知を超えてくる。この次の日に起こった出来事を、きっと、私は一生忘れないだろう。子を持つ親として、大自然の中に生きる人間として、生命の厳格な掟を見せつけられたからだ。 それはヒョウが降って3日目のことだった。まだウブ毛も生えそろわない、親指の先くらいの小さなツバメのヒナが、3羽とも巣から落とされて死んだのだ。しかも、外敵の仕業ではなく。 ヒナを巣から落としたのが、残された方の親ツバメだったのか、新しく来たツバメだったのか、今となっては知ることはできない。そして、それきり、親ツバメは2羽ともパタリと姿を見せなくなった。 「親が死んでしまって、ツバメの子は生きていけなかった」という、歴然とした事実に圧倒されて、私は言葉を失った。これが大自然の掟なのかと、その非情さを責めることさえ出来なかった。そして、人間も大自然の一部であると思い当たったとき、今までは気付かなかった親に感謝する気持ちと(照れるね)、子に対する責任を、はっきりと明確に感じたのだ。 そうして、空になったツバメの巣は、すぐにスズメの巣になった。大自然の掟の中ではリサイクルも「自然」に行われているのである。 |
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