オーラ
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私は掃除が大嫌いだから、部屋の整理整頓が私の肩にのしかかってきたときから(つまり結婚してから)は、なるべく汚さない生活を心がけてきた。
たとえば台所(うちのはキッチンと呼べるしろものではない)。ガスコンロまわりは油汚れが付きやすいから、炒め物のときは、なるべく鍋を振らない。ガーっと鍋を振ってチャーハンを作ると、それだけでおいしくなるけれど、うちではチマチマ、グチグチとかき回す。
それから髪の毛。私は水泳部出身なのだが、あの女子更衣室の床の散乱した髪の毛がトラウマとなった(かどうかは定かではない)が、落ちている髪の毛が大の苦手。それが靴下や素足にからんだときには、身が凍り付く。だから、なるべく髪の毛を落とさないように、ブラッシングは必ずゴミ箱の上だし、ドライヤーをかけた後は(深夜でも)掃除機をかける。
パンや、せんべいや、クッキーを食べるときに、大きい皿かゴミ箱を抱えるというのは、基本中の基本。洗濯物をパンパンするときは、(深夜でも)ベランダでやる。洗面所の鏡は、使用後にすぐ拭く。トイレもトイレットペーパーですぐ拭く。
汚さない&まめなプチ掃除が、掃除を避けるもっとも有効な手段であると、30年も生きているとわかってくる。とにかく、バケツにぞうきんを持っての掃除が、この上もなく大嫌いだから、それを避けるために頑張るのだ。
もちろん、これらすべてのことは、同居人である夫にも同等に課されていた。彼はあらゆる手段を講じて抵抗してきたが(とぼける、気付かぬふりをする、無視する等々)、私の「汚すな」オーラの方が、断然、強力だったので、しぶしぶ従う(ふり?)をしていたようだ。
ところがっ! この8年も続いた穏やかな生活を、一瞬にしてぶち壊す、私以上に強力なオーラを持った人物が現れたのだ!
朝食のパンを持って、ウヘウヘと歩きまわる(当然、クズが落ちる)。ティッシュを意味もなくチリジリに裂き、ばらまく(当然、ホコリとゴミだらけ)。さらに、私の最大のウィークポイントである髪の毛を、しかも私の髪を、エヘーと言いながら引き抜く(当然、痛いし、髪の毛は落ちるし、最悪!)。
そればかりではない。床にこぼしたコーンスープはフローリングの目地に入り込むし、ご飯の付いたベトベトの手でテレビを触るから画面までベトベトになるし。土の付いた庭の置物を、どうしても部屋に入れると言い張るかと思えば、部屋用のスリッパで庭を歩くと言ってきかない。食事は口元に運んでも食べないくせに、アイスは自分で持って食べると主張し、でも、食べるのが遅くて溶けてしまって、ギタギタが部屋中を汚染する。
ダメと言ったら、根性で泣き続け、最後にはこっちが根負けしてしまう。まったく、これ以上に強烈なオーラを持った人物がいただろうか?私のオーラなど、今となっては、ミジンコのオナラ(するのか?)ほどの威力もない。
ただ、この事態をひそかに喜んでいるヤツがいることを、私は知っている。 夫!君だね。もはや夫が、洗面所の鏡を拭かないことや、新聞を読みながらテレビを見つつ食事をしていて、床に食べ物をこぼすことなど、ミジンコのオーラの私には、なんともない。
以前なら、絶叫していた出来事なのに、「ちゃんと拾ってねー」程度で済んでしまうとき、夫は嬉しそうに、こう言うのだ。
「子供が出来て、おまえも成長したなあ。」
まったくもって、育児は育自。いろんなところに副産物を生じさせるものだと、壁に豪快に描かれたクレヨン画を見て、つぶやくこの頃である。
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